
ドライアイ研究会 世話人代表
慶應義塾大学医学部眼科学教室 教授
坪田 一男
近年、ドライアイの悩みを抱える患者様が急増しています。その背景として、オフィスでのVDT作業の増加が大きな要因と考えられています。
近年、パソコン、インターネットの普及に伴い、モニター画面を見続ける時間が急激に増えてきました。昨今はスマートフォンやタブレット端末など、ビジュアルディスプレイに触れる時間がさらに増え、とくに都市部では眼精疲労を訴える例が増加の傾向にあります。
当会発足当時、日本国内のドライアイ患者数を800万人と推計していましたが、2003年の横井則彦准教授(京都府立医科大)らの都市部での調査では、本邦におけるドライアイ患者数は2200万人と報告しています。
ドライアイの概念は、古典的には「涙液生産量の低下」ととらえられていましたが、その病態の研究が進むとともに、涙液生産量の低下だけではなく、安定性の低下や涙液成分の変化、炎症など、新しい病態も認められており、現在、本研究会では「ドライアイとは、様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」と定義しています。
「ドライアイ」という言葉は社会に広く認知されてきました。しかし、たとえば「最近なんとなく視力が落ちたように感じる」「なんとなく見づらい」という視力低下の症状の一因がドライアイかもしれない、ということまではなかなか認知されていません。近年、新たに“実用視力検査”が開発され、ドライアイによる視力低下が診断できるようになってきました。ドライアイへの正しい理解を社会に伝える必要性を一層感じています。
近年はドライアイ研究の進歩から新しい検査法や薬剤も登場して、ドライアイをより確実に診断し、適確に治療することが可能となってきました。
とくに、眼表面の層別治療(TFOT)の概念が生まれ、涙の主要な要素であるムチン、脂、涙液のそれぞれにフォーカスした診断と治療が可能となりつつあり、より一層細やかに眼表面の健康を守るアプローチが実現してきています。
目は脳のインターフェイス、情報の入り口です。その最前線を守るのが涙です。涙の健康を守り、目を守ることが、脳、そして全身の健康と快適につながってきます。
今後も引き続き医療従事者対象の定例講習会や情報交換、研究促進、そして社会への情報発信に積極的に取り組んでまいります。
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