目薬の種類とドライアイ
〜あなたは目薬を正しく使えていますか?〜
「目薬をさしているのに、なかなか良くならない」そんな経験はありませんか?
実は、ドライアイにはいくつかのタイプがあり、目の状態に合った治療を行うことが大切です。
日本ではドライアイの研究が進んでおり、作用の仕組みが異なる複数のドライアイ治療用点眼薬が使われています。近年では、単に涙を補うだけではなく、涙の質や目の表面環境に着目した点眼薬も登場し、ドライアイ治療は大きく進歩しています。
1. 涙の成分
涙は主に、「水分」「ムチン」「油」の3つの成分で構成されています。ムチンは、涙を目の表面になじませ、安定させるために重要な成分です。また、涙の表面にはまぶたの縁にあるマイボーム腺から分泌される油の層があり、涙の膜を安定させる働きがあります。
これらのいずれかに異常が起こると、涙の膜が不安定になり、ドライアイの症状につながります。
① 涙不足タイプ(涙液減少型)
涙の量そのものが少なくなっているタイプです。
涙の分泌量が不足すると、目の表面を十分に潤すことができず、乾燥感、異物感、目の疲れ、かすみなどの症状が出やすくなります。
② 目の表面トラブルタイプ(水濡れ性低下型)
涙の量がある程度あっても、目の表面に涙がうまく広がらないタイプです。
涙を目の表面に均一に広げるためには、ムチンという成分が重要です。ムチンが不足したり、目の表面の状態が乱れたりすると、涙が目の表面にとどまりにくくなります。
たとえば、ガラスの上に水をこぼすと、水が玉のようにはじかれることがあります。目の表面でも、涙がうまくなじまないと、これに近い状態が起こります。
その結果、涙が十分にあるように見えても、目の表面が乾きやすくなり、乾燥感や見えにくさにつながることがあります。
③ 油層異常タイプ
涙の表面には、まぶたから分泌される「油の層」があります。この油の分泌や広がり方に異常があるタイプのドライアイです。
従来、このタイプは「涙が蒸発しやすいドライアイ」と説明されることが多くありました。しかし近年では、油層の異常を単純に「蒸発量の増加」だけで説明するのではなく、涙液層全体の安定性が低下する状態として捉える考え方も広がってきています。
つまり、油の量だけでなく、油の質、広がり方、まばたき、目の表面の状態などが複雑に関係していると考えられています。
2. さまざまな作用機序を持つドライアイ治療用点眼薬
ドライアイ治療では、目の状態に応じて、作用の異なる点眼薬が使われます。代表的な処方薬には、次のようなものがあります。
ジクアホソルナトリウム点眼液
代表例:ジクアス点眼薬、ジクアスLX点眼薬など
ジクアホソルナトリウム点眼液は、目の表面に働きかけて、水分やムチンの分泌を促す点眼薬です。単に涙を外から補うのではなく、自分の目から涙の成分を出しやすくすることを目的としています。涙の量や質を整え、涙液層を安定させることで、ドライアイの改善を目指します。
ジクアスLX点眼液は、従来のジクアスより点眼回数の負担を減らす目的で開発された製剤です。
レバミピド点眼液
代表例:ムコスタ点眼液など
レバミピド点眼液は、ムチンの産生を促し、目の表面環境を整える点眼薬です。
涙を目の表面に安定してとどめるためには、ムチンが重要です。レバミピドは、目の表面の状態を整え、涙が広がりやすい環境づくりを助けます。
また、瞼と角膜や結膜がこすれておこる上皮障害がある場合にも使われることがあります。点眼液が白く濁っているため、点眼直後に一時的に見えにくくなることがありますが、これは薬剤の性質によるものです。
ヒアルロン酸ナトリウム点眼液
代表例:ヒアレイン点眼薬など
ヒアルロン酸ナトリウムは、目の表面にうるおいを与え、涙を安定させる働きがあります。保水性が高く、角膜や結膜の表面を保護する作用があるため、乾燥感や異物感の軽減に用いられます。
比較的イメージしやすく言えば、「外からうるおいを補い、目の表面を守る」タイプの点眼薬です。
ただし、ドライアイの原因そのものに働きかけるというより、目の表面を保護し、症状をやわらげる目的で使われることが多い薬です。
モツギバトレプ点眼液
代表例:アバレプト懸濁性点眼液
モツギバトレプは、従来のドライアイ点眼薬とは異なる新しい作用機序を持つ点眼薬です。TRPV1という受容体の働きを抑えることで、ドライアイによる痛みや違和感だけでなく、目の表面の傷の改善も期待されています。
これまでの「うるおいを補う」「涙の成分を増やす」「目の表面環境を整える」といった治療とは異なり、ドライアイに伴う症状そのものに着目した新しい選択肢といえます。
人工涙液
代表例:ソフトサンティアなど
人工涙液は水分を補う点眼薬です。ただし、眼表面にとどまる時間は短いため、効果は一時的で、他の薬の補助として使用することが多いです。
3. 点眼薬は「正しく使うこと」も大切です
ドライアイの治療では、どの点眼薬を使うかだけでなく、正しく使い続けることも大切です。
【点眼時のポイント】
- 医師から指示された回数を守る
- 自己判断で中止しない
- 1回1滴で十分
- 複数の目薬を使う場合は、点眼の間隔を確認する
- コンタクトレンズ装用時に使えるか確認する
「乾いた時だけ点眼」になっていませんか?
ジクアホソルナトリウムやレバミピドなどの点眼薬は、“頓服”のように、その場だけ楽にするための薬ではありません。
たとえば、血圧の薬は「血圧が高い時だけ飲む」のではなく、毎日続けて飲むことで安定した状態を維持します。
ドライアイの点眼薬も同じです。目が乾いた時だけ点眼するのではなく、継続して使用することで、目の表面環境を整えていくことが大切です。
自己判断で回数を減らしたり、中止したりせず、医師の指示に従って使用しましょう。
また、自己判断で他の目薬を追加したりすることは避けましょう。コンタクトレンズを装用したまま使用できない点眼薬もあるため、使用方法を必ず確認してください。
4. 気になる症状がある場合は、眼科を受診しましょう
ドライアイは、「たかが目の乾き」と思われがちですが、症状や原因は人によって異なります。
目薬を使っていてもなかなか良くならない場合や、乾燥感、異物感、目の疲れ、見えにくさが続く場合は、自己判断せず眼科で相談しましょう。
今回ご紹介した点眼薬はほとんどが、医師の診断に基づいて処方される薬です。自分のドライアイのタイプを知り、目の状態に合った治療を受けることが大切です。
どこに相談すればよいか迷ったら、ドライアイ研究会 会員クリニック一覧から、お近くのクリニックを探すことができます。
<ドライアイ研究会 会員クリニック一覧>
https://dryeye.ne.jp/clinic/
なみだの日2026 動画公開
今年は、「目薬の種類とドライアイ」をテーマに、動画を作成いたしました。ドライアイに使われる目薬の種類や使い方を、分かりやすくご紹介しています。ぜひ、動画も合わせてご覧ください。
【なみだの日2026 動画】
https://youtu.be/qyTXxInKi-U
【ドライアイ研究会会員の先生方へ】
院内での啓発活動にご活用いただけるよう、動画データ(MP4)のダウンロード方法を会員の先生方へご案内しております。本動画は音声がなくても内容をご理解いただけるよう、字幕付きで作成しておりますので、待合室等でもご活用いただけます。
ご不明な点がございましたら、事務局までお気軽にお問い合わせください。
[コンテンツ監修]
ドライアイ研究会 世話人 細谷 友雅
(うぐいす眼科 副院長/兵庫医科大学眼科学教室 非常勤講師)
